日本文化第4号(平成13年・4月)

巻頭言 「正統性」という観念と憲法論議

現在、品切です

対談
「沈黙の歴史」をどう読むか ――――――――――――― 西尾幹二・井尻千男

⇒歴史においては瓦の欠片も、木簡の端っこに書いてある文字も、神話も等価だ。私たちの自身の言葉による解釈と修飾、言葉による論理性とその積み重ねで過去を再構成する―歴史は文学である。

集団的自衛権と政治家の言動 ―――――――――――――――― 佐瀬昌盛

⇒評論家的言辞を弄する首相経験者、政治家としての職務を放棄する野党党首、打算だけの与党実力者・・・。日本で政治家と呼ばれている人種は、本当に政治家なのだろうか?

憲法論議の不毛を糺す ―――――――――――――――――― 吉原恒雄

⇒1年目に入った国会での「論憲」。しかしそこで憲法本来の姿や現行憲法の問題点が明確になったとは言えない。各党は論憲に平行して積極的に改憲案を提示すべきである。

深刻な「経済主権」喪失 ――――――――――――――――――― 宮崎正弘

⇒他国の容喙を赦さず、その国家にふさわしい金利体系を編み出し、通貨を発行し、関税比率を定め、関連法を決めるのは主権に属する行為だが、全てを日本は権利放棄している。

共同体原理の復活をめざすブッシュ政権 ――――――――――――――― 藤井厳喜

⇒民主政や市場の基盤は共同体原理だ。日本の保守主義者が連携を深めるべきパートナーはそれを熟知する共和党だ。

歴史認識は重層的に ――――――――――――――――――― 呉善花
―文化と歴史への理解を精神史として深めるためのノート
⇒歴史的な推移について、変化の全体を言うには、誰にでも納得できるような形でそれを言うには、どういう方法があるのか。そこには、精神の層という観点の導入が有効ではないか。

近現代日中戦争史観 ――――――――――――――――――― 黄文雄
日中戦争について中国は日本に感謝せねばならない、その理由
⇒日本は崩壊した中華世界に大東亜新秩序を再建しつつあった。日本は戦争に負け、そして大東亜新秩序再建は挫折した。―日本がした最も悪いことは大東亜戦争に負けたことだ。

光源氏は大画家だった ――――――――――――――――――― 田中英道
―『源氏物語』の美術論
⇒光源氏は大画家であった、との紫式部の想定には、光源氏が中国の画題ではなく、日本の光景、日本人の姿を描いたことにより真価を発揮したという評価が込められている。

日本の人口急減の意味と戦後教育 ――――――――――――― 坂口健二
―文化性と生物性の相克の時代
⇒西洋文明と東洋文明の融合こそ日本文化の特徴であり、これに誇りを持った教育が求められる。二十一世紀は生命と生活尊重の時代。西欧的な絶対的価値を見直すべき時だ。

[連載4] 日本的合意形成の構造
吉田茂・負の遺産 ――――――――――――――――――― 遠藤浩一

世論も野党も米国も求めていたにもかかわらず再軍備を拒否した吉田は、しかし水面下での密約という不可解な行動をとる。この曖昧さが戦後の憲法・国防論議を混迷させた。

日本精神史ノート@
普遍と固有の相克 ――――――――――――――――――― 井尻千男
―和辻哲郎が挑んだもの
⇒「大化の改新は断乎たる革命」と和辻が断言した時、見据えていたのは固有性に潜む普遍性だった。だが、固有性に潜む宿命を前提とした戦略を認めるかどうかが、保守と革新の岐れ道だ。

図書室

ロマノ・ブルピッタ著 『ムッソリーニ』 評者・豊原源太郎

K・K・カワカミ著 福井雄三訳 『シナ大陸の真相』 評者・田中秀雄