日本文化 第5号(平成十三年・夏)

巻頭言 「大陸」との戦略的距離感覚を

対談
さらば小説、さらば戦後 ――――――――――――― 桶谷秀昭・井尻千男

⇒私事にこだわった、毒にも薬にもならない小説は二十一世紀には滅びる。歴史の一齣と関わりながら、その歴史を次の世代にどう渡していくか、それが文学だ。

中国の台湾史捏造 ―――――――――――――― 黄文雄
 ―台湾は古より中国に属せず
⇒中国が主張する楽天的、短絡的な「お笑い・正しい歴史認識」。中国は、台湾史の湾曲、改纂、捏造と、すでにできることはすべてやっている。残った手段は台湾への武力行使だけだろう。

日本・チベットアイデンティティー考 ―――――――――― ペマ・ギャルポ

⇒公共心、協調性、道徳心、属愛、教育の普及、平等観、義理人情、礼儀正しさ、日本を戦争の廃墟から蘇らせたのは、これら日本人のアイデンティティーである。

日本が直面する「脱亜超欧」という課題 ―――――――――――――― 呉善花

⇒現在の行き詰まりは西欧にはじまる近代世界の、その後追いをしてきたアジア的な世界の行き詰まりである。人類の精神史は「超保守」的にとらえかえされなくてはならない。

韓国・統治道具としての「反日」 ―――――――――――――― 荒木和博

⇒韓国の「反日」は旧支配層のマインドコントロールによるもの。韓国マスコミがヒステリックな反応をするのは、事実関係で検証すると、バーチャルな構図が否定されるからだ。

現代モンゴルの素描 ―――――――――――――― 池田憲彦
 ―首都圏の日常から
⇒遊牧生活は苛酷だ。遊牧が主体の産業構造は不均衡を生み、それに加速がつくと、社会的な安定性に問題が生じてくる。とにかく食料の自給力を高めることが、最重要課題である。

町名変更は日本文化を破壊する ―――――――――――――― 佐藤純一
 ―計算合理主義へのメタテクニカ的批判の試み
⇒文学作品の鑑賞に基本的な打撃を与え、日本文化を破壊してしまう町名変更。文化や伝統の息の根を止め、壊すのは簡単だ。行過ぎた機能主義・計算合理主義の弊害を糺す。

日本人のアイデンティティー 富士山(3)
北斎「来朝の不二」考 ―――――――――――――― 竹谷靱負

⇒江戸後期以来日本人は来訪した外国人に富士山を仰がせてきた。富士山は日本精神の造形そのものであり、その擬人観は統一国家日本の民族としての誇りが込められている。

日本の人口急減の意味と戦後教育 承前 ――――――――― 坂口健二
 ―文化性と生物性の相克の時代
⇒平等主義は間違っている。資源に差があるという事実から目をそらせば虚偽に立脚することになる。大学は画一的であってはならない。多様な大学で個性を伸ばすことが肝要だ。

[連載5] 日本的合意形成の構造
憲政の常道と義理人情 上 ―――――――――――――― 遠藤浩一

⇒占領軍、官僚、党人政治家を巧妙に活用して指導力を発揮した吉田茂だが、面倒なことはアメリカに任せるという特異な政治スタイルは「鳩山追放」の過程で既に確立していた。

日本精神史ノート 2 
普遍主義か、復古革命か ―――――――――――――― 井尻千男
 ―幻想としての「選択の自由」
⇒歴史に伏流するはずの「日本の宿命」を睨んで最適の戦略を構想すること。われわれはいまそういう秋を迎えている。

図書室

 松本徹 著 『三島由紀夫の最期』 (評者 宮崎正弘)

 遠藤浩一 著 『消費される権力者』 (評者 中村信一郎)