日本文化・第3号(平成12年・秋)
巻頭言・現代建築の「空虚なる空間」
現在、品切です
対談
アジア太平洋「第三の波」 ――――――――――――――― 入江隆則・井尻千男
⇒依然として日本はアメリカと中国という二つの国の影響下から抜け出せていない。しかし文明的にも技術的にも経済的にも日本は自分が思っている以上に強力な国だ。文明の大きな波が日本、そしてアジア太平洋地域に向かいつつあることは疑いない。
日本のなかの「もう一つの世界」 ―――――――――――― 呉善花
⇒日本にはアジアでも欧米でもない「もう一つの日本」がある。「現実をトータルにとらえようとする意識」からの発想に、近代の限界を突破するヒントが隠されているはずだ。
土匪史観からみた台湾の近代化 ―――――――――― 黄文雄
⇒日本以外のアジア諸国が近代化に遅れた原因の一つは社会構造―匪賊社会にあった。匪乱が平定され、警察力が社会安定の番人になった台湾は、またたくまに成長に転じた。
三島由紀夫とギリシア ――――――――――――――― 宮崎正弘
⇒ギリシアは三島にとって鑑賞の対象であった。ところが叶わないと思っていた肉体が自分に備わると「鑑賞」は不要となる。ギリシアから日本へ、三島はくるりと転換した。
父性原理の政治家・石原慎太郎 ――――――――――――― 藤井厳喜
―石原総理誕生をなぜ期待するか
⇒政治における父性原理の復活、そして生きた言葉の回復。石原は単なる政策的転換ではなく、政治原理の変革を実現しつつある。石原首相待望論が必然である理由はここにある。
日本文化研究のメタテクニカ的試論 ―――――――――――― 佐藤純一
―過去・現在・未来の力の平行四辺形の概念による日本文化研究の意味
⇒日本文化を過去から現在、未来へのパースペクティブで捉え、技術連関の功罪を正面から受け止めて、自然・技術・文化の三環境要素のバランスが取れた日本の確立が急務だ。
日本人のアイデンティティ―富士山(2)
北斎「兀良哈の不二」考 ―――――――――――――― 竹谷靱負
⇒朝鮮・琉球・蝦夷からも富士山を望見する図柄を採用した北斎。「おらが富士」を創出した日本人。時代を超越して霊山・富士は日本国土の代表であり、国柄の象徴であり続けている。
日本再生の曙光を見る ―――――――――――――――― 神谷満雄
―習俗とカミ祭への愛着
⇒病み上がりのなかで、新しい世の中が始まる。国の志が語られ習俗とカミ祭とによって良き日本が継承され、共同体の歪みは修復に向かう。
[連載3] 日本的合意形成の構造
小沢一郎・蹉跌の理由 ――――――――――――――― 遠藤浩一
⇒大衆民主主義社会の政治指導者が求められる素質は粘り強い合意形成能力である。小沢一郎が合意形成を等閑視するのは、そもそも主張それ自体に無理があるからではないか。
死生観と都市 ――――――――――――――― 井尻千男
―その美学の根拠を問う
⇒開放系で拡散した都市の求心力をいかにして回復するか。生の壮麗化と死の荘厳化―人間がリアリズムを回復をする契機として、都市が大きな役割を果たす時代が必ず来る。
図書室
板垣正著 『靖国公式参拝の総括』 (評者・山内健生)
桶谷秀昭著 『昭和精神史 戦後篇』 (評者・井尻千男)