日本文化第2号(平成12年・初夏)
現在、品切です
巻頭言 アイデンティティー・クライシスと戦う人々への共感と連帯を表明する
対談 「被占領期」精神を超克せよ ―――――― 小堀桂一郎・井尻千男
⇒五月三日は「占領肯定記念日」だ。屈辱的な目に遭いながら、それを「自分達の意思で行った行為だ」とすり替え、美化してしまう。日本人は東京裁判の不合理を修正するチャンスを逸したまま、五十五年目を迎えようとしている。
国民主権主義の非普遍性と妥当性 ――――――――― 吉原恒雄
⇒国民主権は「人類普遍の原理」どころか、特定の時代に、特定の地域で、特定の政治的思惑をもって生まれた概念だ。日本の憲法の統治原理として何の規範力も持たない。
カルマパ十七世はなぜ脱出したか ――――――――ペマ・ギャルポ
中国によるチベット弾圧の実態
⇒第二次大戦中連合国からの協力要請を拒み、日本への友好的な態度を維持し続けたチベットが、いま中国の弾圧や虐殺に苦しんでいる。日本はなぜこれを無視するのか。
「水文学史観」からみた台湾の近代化 ―――――――――― 黄文雄
⇒台湾の近代化を語るには「水の循環」と、水を治め水を利用して作られた「水の歴史」を知らなければならない。「水」こそが、台湾近代社会を支える物質的基盤である。
事例報告 脱共産モンゴルとの文化交流(その二)
モンゴル環境状況白書・作成の試み ―――――――― 池田憲彦
⇒共生から寄生へ――人類は所詮地球環境に規制する存在に過ぎない。近代西欧発の進歩意識の驕りを克服するためには、モンゴル伝統の生活様式の再評価が求められる。
日本人のアイデンティティ――富士山(1)
北斎「月下の不二」考 ――――――――――――― 竹谷靱負
⇒日本を形作るすべてから対象を捨象し、最後に残るのが富士山だ。たとえ幻影でも日本人は富士山をどこからでも拝したい。富士は日本人の心象風景そのものだから。
日本における基盤文化と継承とその持続 ―――――――― 神谷満雄
失われた十年と内的喪失への不安
⇒日本という共同体は変化の持続の中にあっても、自分たちの日常をとりまく内心の秩序を守り通そうとする持続願望のエートス――頑強性を持っている。
[連載2]日本的合意形成の構造 序説
消費される民主主義 ――――――――――――― 遠藤浩一
⇒戦後民主主義は大衆民主主義の日本的窯変であり、日本弱体化のための戦略兵器でもある。それは「保守本流」の政治家たちを蝕み、今日ますます猖獗をきわめている。
都市文明の危機 ――――――――――――――――― 井尻千男
―集住する根拠はあるのか
⇒日本人は都市という共同体や共生のシステムをつくる根拠を見失っているが、情報革命が進むほど、身体的リアリティを保証する空間として都市は見直されることになろう。
図書室
長谷川三千子著 『正義の喪失』 (評者・山内健生)
呉善花著 『韓国併合への道』 (評者・藤井厳喜)