神道・仏教・キリスト教から見た靖国神社 (平成16年8月4日 於 文京シビックセンター・小ホール)

司会     高森明勅(拓殖大学客員教授)
神道     稲貴夫(神社本庁主事)
仏教     井上宝護(国柱会講師)
キリスト教  神藤耀(大阪キリストの幕屋主事)


 第一部の意見発表で稲主事は「拝殿の前を見てもらえばわかるように、靖國神社はどの宗教にも開かれている」と指摘。
 井上講師は国柱会の歴史を踏まえ「折伏勝義」「立正安国」「法国冥合」について解説した後、「わたしたちの靖國神社への立場はごく常識的なもの。戦没者に対し感謝、功労の気持ちが無ければ国の独立も発展も無い」と説いた。
 続いて神藤主事は「キリストの幕屋は、日本のキリスト教を代表するような大きな団体でもなければ反日反戦でもない」とした上で、「靖國神社では拝殿の前で最敬礼し、心からの尊敬と感謝をご霊前に捧げる。グループで参拝する時は祈り、賛美歌を歌うことを許されている。すべての人に開かれて施設です」と参拝の様子を述べた。
 最後に高森教授は「靖國神社問題」は根の深いものでも充分な根拠のあることでもなく、占領軍が戦犯に指名した人々は、四千万人に及び署名により日本では犯罪人ではなくなったことや、昭和五十年八月に三木武夫元首相が行なった靖國神社参拝がにわかに問題視されたことなど、過去の事例を解説した。

 第二部のディスカッションでは稲主事は「靖國神社は、戦没者の祭祀という特別に公的な性格から、単立の宗教法人になっている」「いわゆるA級戦犯分祀は神社神道の祭祀に規定されていないことであり、仮に行なうとしても戦没者に対し非礼である」と神道の立場から説明した。
 神藤主事は各地での靖國訴訟の経緯に触れ、「総理、大臣が堂々と参拝できるようにしてほしい。また、国民の皆さんに政教分離と日本の文化について、正しい理解を持っていただくようにしたい」と問題提起した。
 高森教授は反靖國側に混乱が生じていることを指摘し、「新しい国立追悼施設をつくる会」に対し「無宗教の追悼施設」というのは存在できるのかという疑問、新しい追悼施設は第二の靖國につながるという意見、千鳥ヶ淵を見直そうという動きを紹介したうえで、「すでに靖國神社の社頭には、まさに宗教的多元性を保証する場が機能している」と反論した。
 井上講師から政治と宗教の関係性について問題提起されるなど、その後も宗教者からの各立場からの真摯な議論が交わされた。

 主催者の異宗教対話実行委員会の藤本隆之代表は、「今日のシンポジウムで仏教、キリスト教にも靖國を応援する人はいるということを知ってもらいたい」と意義を語った。